製品を開発するには、アイデア出しから販売、そしてマーケティングまで、様々な手順が必要となります。「様々な手順」と言っても、製品開発プロセスは、もともとは製造業において生産を合理化する手順として生み出されたものですので、デジタル化が進んだ現在においても、新製品を迅速に市場に提供できる標準化された方法として活用できます。

Amazon創業者のジェフ・ベゾスは、「Webが年率『2300%』で成長しているのを見たとき、安堵としてはいられないと思った」と語り、(「2300%」という計算ミスから)「『これほどの成長にマッチするのはどのような事業計画だろうか』と考えるようになり」、様々な製品候補から「書籍が一番いい」との結論に至り、「クレイジーな」賭けに出たわけです。

Amazonを例に出したからといって、フリーランスに関係ないとは言えません。フリーランスも何かを売って商売をしているのですから。フリーランスのITエンジニアは「プログラミング技術」を売ることをビジネスにしています。従って、「プログラミング技術」も「製品」として扱うことで、製品開発プロセスの一連の流れを適用できます。

製品開発とは

製品開発とは、製品ライフサイクル(開発、導入、成長、成熟、衰退)の最初の段階であり、オンラインで販売する製品を開発しようとするとき、ベゾスのように考え、製品や市場や流通の特性を体系的に分析し、事業計画を構築する必要があります。

製品開発プロセスは、製品のコンセプトを市場に見合った製品に変えるための手順で構成されています。製品のアイデアから始まり、技術仕様、製品のポジショニング、価格戦略、サービスの構成要素、財務特性で完了します。

製品開発プロセスには、IDEOのデザイン思考、BAHモデル、Stage-Gateモデル、リーン製品開発、ExPDなど、様々なフレームワークがあり、アイデア主導型や市場主導型がありますが、大抵は同様の手順を踏みます。

製品開発を始める前に考えておきたいこと

製品開発の手順を確認する前に、製品開発の前提について考えてみます。製品開発に着手する前に、以下を確認しておくと、時間と労力を大幅に節約できます。

1. 需要があるか

構想中の製品は、買いたいと思う顧客がいるでしょうか。あるいは顧客を生み出すことができるでしょうか。アイデア主導型の製品だとすると、大抵は現在の需要はなく、その製品を販売するための新しい市場を開拓する必要が出てきます。

2. 生産できるか

音楽、ソフトウェア、サービスなどのデジタル商品などは、特段問題なくつくることができるでしょうが、技術的につくるのが難しい場合もあります。販売しようとしている製品は製造可能でしょうか。世界のどこかですでに製造されているものでしょうか。

3. どのように顧客に届けるか

顧客はどこにいるのでしょうか。顧客への配送手段はあるのでしょうか。新たに流通パートナーシップを構築しなければならないのでしょうか。現在では、Eコマースソフトウェアやプラットフォームと、物流ソリューションがありますので、世界中どこでも販売と配送ができますが、それで問題ないでしょうか。

4. どのような競合があるか

競合の多い市場で、似たような製品を販売し、競合製品よりも大きな価値を提案して顧客を獲得するのでしょうか。それとも、競合が少ない市場で、独自の製品を販売し、競合製品との差別化を図ることに注力するのでしょうか。場合によっては、競合が多い市場のほうが、需要があるかどうかの要件を満たせるという意味で、よい場合もあるでしょう。

5. 財源はあるか

製品開発は投資ですので、資金の裏付けがなければ、販売に至る前に頓挫してしまいます。フリーランスや個人企業の場合は、他の業務の時間を削って製品開発に相当の時間を費やすことになりますので、しばらくの間、収入がゼロになることもあり得ます。さらに、開発途中で追加資金が必要になることもあります。資金調達ができるかどうかで、どれだけ野心的な商売ができるかどうかが決まります。

製品開発プロセスの7ステップ

製品開発プロセスは、最終のステップに至るまでの時系列として表しますが、実際には順序が異なることもあり、各ステップを行ったり来たりすることもあります。そのため、以下のステップは一般的な目安として考えてください。

1. アイデア出し

最初に、アイデアから製品のコンセプトを決めます。コンセプトは、おぼろげながら浮かんできたり、なにかの拍子に思いついたり、調べ物をしている最中に調査結果からヒントを得たり、気まぐれに生み出される場合が多いはずです。それを記録して形にしていくことから始めます。

アイデア出しのヒント

アイデアを出す方法は無数にあります。顧客の意見や要望、市場からのフィードバックをこなしているうちに、その対応にかなりの時間が取られてしまうことがよくあります。その過程で思いついたことをメモしていくと、製品のコンセプトを明確に文章にすることができます。

この段階では、製品がどのような顧客のどのような問題をどのように解決するかや、製品の機能を文章化していきます。だらだらと長文にならないように、あくまで簡潔に、誰にでもわかりやすいように、コンセプトを文面にします。ポジショニングステートメントなどと、要領は同じです。

ブレインストーミング
質より量を重視したブレストの方法で、様々なアイデアを出していきます。10個よりも100個のアイデアのほうがよいでしょう。そして、マインドマップなどに整理していきますが、つまらないアイデアはどんどん削除していきます。残ったアイデアが多すぎると、顧客が必要としない機能を詰め込んだ製品となってしまいます。
他人の反応を見る
ピッチすなわちアイデアの軽いプレゼンを行って、他の人の反応を見てみます。他人のフィードバックを得ることで、製品ポジショニングの構築に役立ちます。このテストは、製品のコンセプトが明確になった後に行います。そうしないと、フィードバックも不明瞭なものになります。

2. 市場調査

市場調査とは、製品に対する需要の規模や特徴を定量的にとらえることです。市場調査は重要な作業であり、経理・財務担当者(フリーランスだと財務面の観点)から詳細なものを要求されることもあるでしょう。ただし、需要がないからといって、製品にならないということではありません。ポスト・イットは需要のない教育市場に進出しました。

市場調査のヒント

無料で提供されている市場統計が数多くあります。手に入れられるデータに注目し、相互に参照するなどして、市場での製品の定量的な見解を構築していきます。仮説が明確で信頼できれば、正確さは重視しなくとも構いません。

オンラインでの調査
人口統計データは総務省統計局や国立社会保障・人口問題研究所、各自治体Webサイトで提供されていますし、消費動向や経済指標、その他市場規模データも各所で公開されています。多くの市場調査は、オンラインで手に入ります。
市場の変化
市場は常に変化しています。経済や社会情勢の動向に注視するとともに、市場規模の予測を変える仮説を提起してみたり、調査中に自社製品に関する特殊なデータを明らかにできることもあります。

3. 事業計画(ビジネスプラン)の作成

製品を発売するには、経済的な側面からの検討が必要となります。本格的な事業計画をつくらずとも構いませんが、製品の開発からマーケティングまで網羅したものでなければなりません。

製品開発段階での投資、発売後の販売パイプラインに関わるコスト、マーケティングの費用を確定させ、どの時点で利益を生むかを特定します。顧客生涯価値の分析を行う長期的視点を考慮することで、製品の定義をより洗練させることができます。

事業計画作成のヒント

製品開発段階と発売段階との2段階に分けて、事業計画の策定を始めるのが有効です。それぞれの段階で、指標とする要素が異なり、必要な投資額も異なります。前者では、調査に要する時間や、外部の専門家への依頼、プロトタイプの開発などの費用を、後者では、投資可能な金額を検討します。

仮説
どのような事業計画でも、最も重要な問い・問題は、常に仮説から始まります。仮説を明確にし、それを書き留めておきます。
シミュレーション
優れた事業計画では、仮説が変数として組み込まれており、様々なタイプのシナリオをシミュレートすることができます。

4. プロトタイピング

実際に使える製品のモックアップ、プロトタイプを作成することが、プロトタイピングです。プロトタイプを、顧客が製品を使う際の仮説を検証したり、発売後のマーケティングの目的で使うなど、製品として発売する直前のバージョンとして活用します。

この段階が製品開発プロセスで最も時間を要します。場合によっては数年かかることもあるでしょう。その分、費やすコストも増えることを予想しておきます。

プロトタイピングのヒント

理想的には、自分自身がプロトタイプの構築に綿密に関わるべきです。ただし、物理的なプロトタイプを作成するための必要な機材や材料がない場合は、作成作業を外部に委託しなければならないこともあります。その場合は、製品の技術仕様を詳細に念入りに作り込まなければなりません。

テスト
プロトタイピングの第一の目的は、テストをすることです。自分以外の他の人にもテストをしてもらうと、自分の気づかない指摘やアドバイスをもらえることがあります。
見栄え
できるだけ見栄えのよい魅力的なプロトタイプをつくるようにします。長期に渡る製品開発プロセスの初めての具体的な成果ですし、次のステップへの足がかりとなります。

5. 資金調達

資金潤沢の場合は問題ないのですが、資金が不足する場合は、クラウドファンディングを活用できます。クラウドファンディングは、資金調達の目的だけではなく、製品の販売準備が整う前に市場からのフィードバックを得るための手法でもあります。最初の顧客層と交流もできるため、非常に有益な経験となります。

ここで顧客に提示する製品は、完成品ではなくプロトタイプのため、プロトタイプ段階から見栄えよくつくっておく必要があります。ここでのセールスは、完成した製品を販売する際の予行演習ともなり、実際の顧客の反応を知ることができるため、ポジショニング戦略の策定にも役立ちます。

資金調達のヒント

クラウドファンディングのプロジェクトでは、製品開発プロセスのすべてのステップを、すでにすべて行ったかのように提示する必要があります。市場や製品を説明し、プロトタイプを見せ、価格を提案し、初めての顧客候補を一通り生み出すことができます。

金額と時間
クラウドファンディングのプロジェクトには、目標金額と制限時間がありますので、時間内に目標金額を達成できるように努めないとなりません。
得られる成果
時間切れで目標金額に達せずとも、反省すべき点や今後の改善点が見つかります。これらは、最終的な製品販売に役立ちます。

6. デザインと制作

プロトタイピングと資金調達の際に得た知識で、技術仕様書を作成することができます。製品の種類によっては、最終製品に必要なデザイン仕様を、外部のデザイナーに依頼する必要が出てくるかもしれません。

デザインと制作のヒント

仕様書が詳細であればあるほど、不具合や不備の発生が少なくなります。外部委託する際にはこの点に注意が必要です。また、海外に委託する場合は、プロジェクト管理が重要となります。

想定外の事態に備える
このステップが最もリスクが大きくなります。社内での制作の場合も想定外の事態が出てくることもありますが、特に、外部委託した場合は、不測の事態が発生する可能性が大きくなりますので、この場合に備えて計画を立てておかなければなりません。
バッファを入れる
計画にはバッファが必要です。ただし、計画のすべての面でバッファが必要ということはありません。それはかえって非効率になることがあります。発売日の計画には、予期せぬ遅延が起きる可能性を鑑みて、バッファを確保しておいたほうが安全です。

7. マーケティングと流通

製品の販売とマーケティングのステップが、プロトタイピングの次に難しいかもしれません。製品を発売するにあたっては、マーケティングミックスやGTM戦略が欠かせません。また、マーケティング計画には、価格戦略も必要となります。

マーケティングと流通のヒント

市場に投入する新製品を、どのような価格で、どのようなチャネルを介して、ターゲットオーディエンスに届けるのか、そのためのコンバージョンファネルはどのようなものか、コンバージョンを通過したマーケティングファネルはどのようなものか、そして、どのような販売戦略を用いるのかを決めていきます。また、流通に関しては、どのようにして顧客に届けるのかを決定します。

柔軟になる
計画に囚われすぎないようにします。上手く行かないことを続けても上手く行かないことが続くだけです。常に柔軟に、効果のあるチャネルに予算やリソースを集中させます。
学び続ける
ビジネスは学びの連続ですし、製品の発売直後は特にそうです。広告メッセージ、販売、顧客からのフィードバックなどから、何が効果的で何が効果的でないか、学ぶことは多いはずです。

製品開発の実例

大企業はブランドを保有し、次から次へと新製品を市場に送り出しています。こういった大企業を除くと、製品開発プロセスは、市場にある製品の数だけ存在すると言っても過言ではありません。その中には際立った製品が多数ありますが、そのうち幾つかを見てみます。

1. GoPro

アメリカのニック・ウッドマンは、オーストラリアへのサーフィン旅行の際、高品質のアクション写真を撮りたいと思っていましたが、そのとき市場にあったのは10回のうち9回は失敗する使い捨ての防水カメラだけで、理想に見合う製品がなかったことに着想を得て、GoProをつくりました。最初のウェラブルカメラを販売するまでに2ヶ月かかると想定していましたが、結果2年を要しています。(Company Q & A

2. Anker

Amazonで最も売れているポータブル充電器ブランドのAnkerをつくり出したのは、中国のスティーブン・ヤンです。そのAnkerは、クラウドファンディングのKickstarterでポータブルセキュリティカメラを提案し、約3億5,000万円を調達しています(eufyCam)。

成功する製品開発プロセス

製品開発に必要なステップを見てきましたが、これはあくまで一例です。製品のアイデアや性質などによって、製品開発ステップは異なります。外部の資金なしに製品を市場に出せる独自のアイデアがあったり、市場のギャップに着目してそこに製品を投入しようとしていたり、その事情は様々です。

事業計画や細かいプロセスも重要ですが、意思決定や決断力、製品ビジョンの質のほうが、成功する最大の要因となります。また、フリーランスや個人企業で製品開発プロセスを行う場合は、一人でできることは限られますので、プロセスの細部にこだわり過ぎず、知恵を振り絞って、効率の良い手順で進めていくことも必要でしょう。

投稿者

あしやときおと申します。Web系プログラミング、Webデザイン、デジタルマーケティングを生業としています。

Pin It