WordPressフルサイト編集マスター講座 1 – 初心者向け全5回講座

WordPressの新しい常識「フルサイト編集(FSE)」をご存知ですか?

コード不要で自由なデザインを実現する、この革新的な機能の全てを、フルサイト編集の仕組みからメリット、従来のWordPressとの違いまで、この記事で徹底解説します。

初心者の方が抱く疑問を解消し、Webサイト制作への不安を自信に変える完全ガイドです。

この記事を読むと…

  • WordPressの新しい常識「フルサイト編集(FSE)」の仕組みと全体像を掴めます。
  • 従来の方法との明確な違いを学び、フルサイト編集がなぜ未来の標準なのかを、深く理解できます。
  • コード知識ゼロでも、なぜ自由なデザインが可能になるのか、その核心を知ることができます。
  • Webサイト制作への「難しい」という不安が解消され、フルサイト編集で何ができるかワクワクする未来像を描けるようになります。

1. フルサイト編集(FSE)の核心 – WordPressサイト構築の新しい常識

「自分のWebサイトを持ちたいけれど、プログラミングの知識がなくて一歩が踏み出せない」、あるいは「WordPressを始めてみたものの、理想のデザインを実現する方法が分からず途方に暮れている」と感じているなら、その歴史は今日で終わりを迎えます。

これから解説する「フルサイト編集(Full Site Editing、FSE)」は、単なるWordPressの一機能ではありません。

それは、Webサイト制作の哲学そのものを変える、大きな「革命」なのです。

まず、この新しい時代のWebサイト構築手法、フルサイト編集の正体を正確に理解しましょう。

フルサイト編集とは、Webサイトを構成するヘッダー、フッター、コンテンツエリアといった全ての要素を、「ブロック」と呼ばれる部品の組み合わせだけで、視覚的に構築できるWordPressの革新的な仕組みです。

これまで、Webサイトの「見た目」と「構造」は、専門家が書くプログラムコードによって大部分が固定されていました。

しかしフルサイト編集の登場により、その設計の主導権が、完全にユーザーの手に委ねられたのです。

Gutenbergプロジェクトが生んだ革命

フルサイト編集の背景を語る上で、Gutenberg(グーテンベルク)というWordPressの長年にわたる開発プロジェクトの存在は欠かせません。

2018年にWordPress 5.0で導入され、当時のWordPressユーザーに衝撃を与えた「ブロックエディター」は、Gutenbergプロジェクトの第一段階に過ぎませんでした。

当初のブロックエディターは、あくまで記事の「中身」だけをブロックで編集するためのものでした。

しかし、プロジェクトが最終的に目指していたのは、Webサイトの「全て」をブロックの対象とすることでした。

そして数年間の開発と改良を経て、ついにその壮大な構想の集大成としてフルサイト編集が完成したのです。

つまりフルサイト編集は、WordPressが長年目指してきた「誰もが直感的に、そして自由に情報発信できるツールであるべき」という理想を、最も高いレベルで実現した姿と言えます。

フルサイト編集を動かす二つのエンジン:「ブロックテーマ」と「サイトエディター」

この革命的なフルサイト編集を動かすためには、二つの新しいエンジンが不可欠です。

この二つは、言わば車の両輪であり、どちらが欠けてもフルサイト編集は機能しません。

ブロックテーマ

フルサイト編集の能力を100%引き出すために、全く新しい設計思想で作られた新世代のWordPressテーマです。

このブロックテーマを選択し、有効化することが、フルサイト編集を利用するための絶対的な第一歩となります。

サイトエディター

ブロックテーマを有効化すると利用可能になる新しい編集画面です。

Webサイトのあらゆる要素のデザインとレイアウトを、このサイトエディターという一つの場所で一元的にコントロールします。まさに、Webサイトのコックピットです。

この「ブロックテーマ」という設計図を、「サイトエディター」という作業場で組み立てていく。

これが、フルサイト編集によるWebサイト構築の基本的なイメージです。

2. 従来方式との徹底比較 – 何がどう変わったのか?

フルサイト編集の革新性をより深く理解するために、従来のクラシックテーマを用いたWebサイト構築手法との違いを、複数の観点から明確に比較していきましょう。

Webサイト設計思想の根本的な違い

最大の違いは、前述の通り、Webサイトの設計思想そのものにあります。

従来の開発では、デザインの骨格は専門家が書くプログラム言語(PHP)で書かれたheader.phpなどのテンプレートファイルに強く依存していました。

しかしフルサイト編集では、その骨格までもがユーザーの手に委ねられたのです。

比較項目クラシックテーマ (従来方式)ブロックテーマ(フルサイト編集)
主要な編集画面テーマカスタマイザー、ウィジェット、メニューの3画面に分散サイトエディターに全ての機能が統合
テンプレートの構造PHPファイルで構成(専門知識必須)HTMLファイルとブロックの組み合わせで構成(視覚的)
デザイン設定の管理style.cssファイルと各設定画面theme.jsonファイルでサイト全体の設定を一元管理

クラシックテーマとの違いで最も大きいのは、このテンプレート構造の変化です。

専門知識がなければ触ることのできなかったWebサイトの骨格部分が、視覚的なブロックの組み合わせに置き換わったことで、誰もがWebサイトの構造自体を安全に変更できる道が開かれました。

フルサイト編集がもたらす4つの明確なメリット

この構造的な変化は、私たちWebサイト制作者に計り知れない恩恵をもたらします。

メリット1:究極の直感性とリアルタイム編集

最大の利点は、Webサイトの見たままを直接編集できることです。

「この画像の横にテキストを配置したい」と思えば、ブロックをドラッグするだけ。

「このボタンの色を少しだけ変えたい」と思えば、カラーピッカーをクリックするだけ。

こうしたいというアイデアが、遅延なくリアルタイムで形になります。

メリット2:サイト全体の驚異的な統一感(グローバルスタイル)

サイトエディターの「スタイル」機能は、Webサイト全体のデザインルールを司る強力な機能です。

ここでWebサイトの基本フォント(タイポグラフィ)や色の組み合わせ(カラーパレット)を設定すれば、Webサイト内の全ての見出し、ボタン、リンクのデザインが一瞬で統一されます。

これにより、どのページを訪れても一貫したブランドイメージが保たれ、プロフェッショナルな印象を与えることができます。

もちろん、レスポンシブデザインも統合管理されており、パソコン、タブレット、スマートフォン、どのデバイスで見ても美しい表示を維持することが極めて容易になりました。

メリット3:表示速度とパフォーマンスの向上

ブロックテーマは、theme.jsonという一つのファイルでWebサイト全体のデザイン情報を効率的に管理します。

これにより、従来のテーマのように複数のCSSファイルを読み込む必要がなくなり、コードが最適化され、結果として表示速度改善に繋がります。

高速なサイトは訪問者の体験を劇的に向上させるだけでなく、Googleの検索順位評価においても極めて有利に働きます。

メリット4:専門知識不要の「ノーコード」体験

フルサイト編集は、Web制作の民主化を大きく前進させました。

これまで専門家や制作会社に依頼しなければ実現できなかったような複雑なレイアウトや動的なコンテンツも、ブロックの組み合わせだけで構築可能です。

まさにノーコードでのWebサイト制作を、WordPressという世界標準のプラットフォームで体現しているのです。

知っておくべき2つの注意点(デメリット)

一方で、この新しいテクノロジーには、事前に理解しておくべき注意点も存在します。

注意点1:新しい操作方法への学習コスト

これまでのWordPressの操作、特にクラシックテーマのカスタマイズに慣れ親しんだ方ほど、最初は操作に戸惑うかもしれません。

テーマカスタマイザーはどこへ行ってしまったのか?」
「サイドバーを編集したいのに、ウィジェットが廃止されたの?」

といった疑問は、誰もが通る道です。

フルサイト編集は新しい概念であり、そのパワフルな機能を最大限に引き出すためには、新しい操作方法に慣れるための学習時間が必要です。

注意点2:発展途上のエコシステム

フルサイト編集に対応したブロックテーマや関連プラグインの数は、長い歴史を持つクラシックテーマのエコシステムに比べれば、まだ発展途上です。

選択肢は日々力強く増え続けていますが、非常にニッチで特殊な機能を探している場合、対応するプラグインがすぐには見つからない可能性も、現時点では考えられます。

3. フルサイト編集の始め方と必須知識

「フルサイト編集がすごいのは分かった。じゃあ、具体的にどうやって始めるの?」

その手順は、あなたが思うよりもずっとシンプルです。

ブロックテーマの選び方とインストール

  1. WordPress管理画面の左メニューから「外観」→「テーマ」へと進みます。
  2. 画面上部の「新しいテーマを追加」ボタンをクリックします。
  3. 次に「特徴フィルター」を開き、「フルサイト編集」の項目にチェックを入れて「フィルターを適用」ボタンを押します。
  4. 画面に表示されたものが、すべてフルサイト編集に対応したブロックテーマです。

最初は、最新のWordPressに同梱されるデフォルトテーマ『Twenty Twenty-Five』を使って練習することを推奨します。

このテーマは、美しいタイポグラフィとコンテンツが主役となるクリーンなデザインに重点を置いており、フルサイト編集の洗練された機能を学ぶのに最適なお手本となります。

レンタルサーバーのWordPress管理画面のWordPressテーマ

サイトエディターの起動と基本画面

ブロックテーマである「Twenty Twenty-Five」を有効化すると、管理画面の「外観」メニューの中に「エディター」という項目が出現します。

これが、新しいアトリエ、サイトエディターへの扉です。

レンタルサーバーのWordPress管理画面のWordPressテーマのエディター

サイトエディターは、前述の通り、大きく3つのエリアで構成されています。

レンタルサーバーのWordPress管理画面のWordPressテーマのエディター、フルサイト編集のサイトエディター
レンタルサーバーのWordPress管理画面のWordPressテーマのエディター、フルサイト編集のブロックエディター
左側のナビゲーションパネル
Webサイト全体の設計図(テンプレート)やデザインルール(スタイル)を切り替えたり、ブロック・パターンなどを選択する場所です。
中央のプレビューエリア
サイト全体の設定をするサブメニューや、Webサイトの見た目をリアルタイムで確認し、ブロックを直接操作するメインの作業場です。
右側の設定サイドバー
選択したブロックの詳細設定や、ページ全体のデザイン設定を行う場所です。

この3つのエリアの関係性を意識しながら操作することが、上達への近道です。

4. フルサイト編集のよくある質問(Q&A)

[Q] 今使っているクラシックテーマから、フルサイト編集に簡単に移行できますか?

[A] いいえ、テーマの構造が根本的に異なるため、ボタン一つでの直接移行はできません。

フルサイト編集を利用するには、テーマを「ブロックテーマ」に切り替え、Webサイトのデザインとレイアウトをサイトエディターで再構築する必要があります。

記事や固定ページなどコンテンツはそのまま引き継がれます。

[Q] Elementorなどのページビルダープラグインとは、何が違うのですか?

[A] フルサイト編集は「WordPress本体の標準機能」であるのに対し、ページビルダーは「サードパーティ製のプラグイン」である点が最大の違いです。

標準機能であるフルサイト編集は、WordPress本体のアップデートとの互換性や長期的な安定性、そして動作の軽快さにおいて優位性があると考えられています。

[Q] フルサイト編集を使えば、もうプラグインは必要ないのですか?

[A] いいえ、プラグインの重要性は変わりません。

例えば、高度なSEO対策、お問い合わせフォーム、EC(Eコマース、オンラインストア、ネットショップ)機能、セキュリティ強化といった専門的な機能は、フルサイト編集だけでは実現できず、これまで通りそれぞれの目的に特化したプラグインの力が必要となります。

[Q] フルサイト編集は、SEO(検索エンジン最適化)に強いのでしょうか?

[A] フルサイト編集自体が直接的にSEO上有利になるわけではありません。

しかし、フルサイト編集は表示速度の速いサイトを作りやすく、また適切な見出し構造などを論理的に構築しやすいため、「SEOに強いサイトを作るための優れた土台」であると言えます。

最終的な評価は、Webサイトのコンテンツの質に依存します。

まとめ:WordPressの未来を、今こそその手に

今回は、WordPressの未来そのものである「フルサイト編集」の全体像を、その本質からメリット、そして具体的な始め方まで、網羅的に解説しました。

フルサイト編集はもはや単なる選択肢の一つではなく、これからのWordPressサイト構築における新しい標準です。

この強力で自由なツールを使いこなす第一歩を、この記事で踏み出せませたでしょうか。

しかし、どんなに優れた設計図も、それを実現するための土地と住所がなければ意味がありません。

次回は、この強力なフルサイト編集を動かすための「環境構築」です。

Webサイトの「土地」と「住所」となるレンタルサーバー選びから、WordPressのインストール、そしてWebサイト公開前に必ず済ませておくべき必須の初期設定までを、一つの記事で完全網羅する【決定版】WordPress環境構築の全手順をお届けします。

創造性を解き放つための、最高の舞台を準備しましょう。

どうぞお楽しみに。

芦屋 ときお

芦屋 ときお

ソフトウェアエンジニア(フルスタック、主にWeb系)。HTML, CSS, JavaScript, TypeScript, PHP, Python, Go, Vue.js, Express, Node.js, Nuxt, Next.js, Laravelなど。C#, ActionScriptも。デザイン、デジタルマーケティング。