共有サーバー上のWordPressサイトが遅い、またはセキュリティに懸念がある場合、VPS移行が解決策となり得ます。VPSはリソースの占有による高速化と、自由な設定によるセキュリティ強化が可能です。本記事はVPSの利点、移行手順、VPSサービス比較を解説します。

この記事から学べること

本記事を読むことで、共有サーバーの性能限界とVPS移行によるパフォーマンス上の利点(リソース占有、サイト高速化)を理解できます。セキュリティ向上の利点も併せて学べるでしょう。実践的な内容として、大まかにはなりますが、WordPress移行の全手順、VPSサービスの選定方法、Webサイト運営に必要となる基本的なサーバー管理知識が学べます。

共有サーバーの潜在的デメリットとセキュリティ上の問題点

共有サーバーが抱えるセキュリティ上の懸念は、主にその「共有」という性質に起因します。以下に具体的なデメリットとリスクを挙げます。

他ユーザーからの影響「同居リスク」

共有サーバー環境では、1台の物理サーバーリソースを複数のユーザーアカウントで分割して使用します。このため、他のユーザーの活動が自身のWebサイトに悪影響を及ぼす「同居リスク」が発生します。

脆弱性の波及

同居する他のWebサイトに存在する脆弱性がターゲットにされ、攻撃された場合、サーバー全体が影響を受け、結果として自身のWebサイトも被害を受ける可能性があります。

リソースの競合

特定のWebサイトが高いサーバー負荷を発生させると、CPUやメモリといった共有リソースが枯渇することがあります。これにより、自身のWebサイトの表示速度が低下したり、アクセス不能になったりする事態が起こり得ます。

IPアドレス評価の低下

同居する他のWebサイトがスパム送信などの不正行為を行った場合、共有IPアドレスの評価が低下し、自身のWebサイトからの正当なメール送信にも支障が出たり、SEO評価にも悪影響を及ぼす可能性があります。

リソース制限が引き起こす表示速度低下とセキュリティ問題

共有サーバーでは、各ユーザーが利用可能なリソース(CPU、メモリ、プロセス数など)に上限が設けられています。アクセス集中や高負荷なプラグインの使用により、この上限に達するとサイトの応答速度は顕著に低下します。低い応答速度はユーザー体験(UX)を損なうだけでなく、高いサーバー負荷状態は、時に脆弱性スキャンなどの攻撃を受けやすくなる要因ともなり得ます。

サーバー設定の自由度の制約とセキュリティ対策の限界

共有サーバーでは、サーバー全体の安定運用を優先するため、ユーザーによるサーバー設定の変更範囲が制限されています。結果として、以下のような制約が生じます。

  • 特定のPHPバージョンやソフトウェアモジュールを利用できない。
  • 独自の不正アクセス対策ツールや高度なファイアウォール設定を導入できない。
  • WAF (Web Application Firewall) の利用が制限される、または選択肢がない。

このように、能動的なセキュリティ強化策を講じることが困難な場合があります。

共有サーバー環境特有の脆弱性と過去の攻撃事例

共有サーバーの管理システム自体の脆弱性や、基盤となるOS・ミドルウェアの更新遅延が原因で、過去に不正アクセスや情報漏洩が発生した事例が存在します。サイト運営者がWordPressレベルで万全な対策を施していても、基盤インフラに問題があればリスクは残存します。

これらの問題を解決し、より安全で制御可能なWebサイト運営環境を実現するために、VPSへの移行が選択肢のひとつとなります。

VPS(仮想専用サーバー)の解説:共有サーバーとの比較、利点と注意点

VPSは「Virtual Private Server」の略称であり、仮想的にユーザー専用のサーバー環境を提供します。ここではVPSの基本概念、共有サーバーとの主な違い、導入のメリットとデメリットを説明します。

VPSの動作原理と特徴:高い自由度の理由

VPSは、物理サーバー上に仮想化ソフトウェアを用いて、独立した複数の仮想サーバーを構築・提供する技術です。各仮想サーバーは、OSレベルで他の仮想サーバーから隔離されており、それぞれに専用のCPU、メモリ、ディスクスペースが割り当てられます。この独立性により、ユーザーはroot権限(管理者権限)を取得し、OSの選択からソフトウェアのインストール、各種設定のカスタマイズまで、物理的な専用サーバーに近いレベルの自由度を得られます。

VPS移行がWordPressサイトにもたらす主要な利点

VPSへ移行することで、WordPressサイト運営において以下の具体的なメリットが期待できます。

1. セキュリティレベルの向上

  • 他のユーザー環境からの完全な分離。
  • root権限に基づき、ファイアウォール、不正アクセス対策、アクセス制御などの高度なセキュリティ施策を自由に実装可能。
  • OSやミドルウェアのバージョン管理を自身で行い、脆弱性への迅速な対応が可能。

2. パフォーマンスと安定性の改善

  • 割り当てられたサーバーリソース(CPU、メモリ等)が保証されるため、安定した処理能力を発揮。
  • 高サーバー負荷時でもパフォーマンスが低下しにくい。
  • サーバー設定の最適化によって、WordPress高速化が実現可能。

3. 設定と運用の高い自由度

  • 任意のOSや必要なソフトウェアの自由なインストール。
  • PHPやデータベースの自由な選択と管理。
  • サーバー設定ファイルへの直接アクセスと編集。

4. スケーラビリティ(拡張性)

  • Webサイトの成長に応じたリソース(CPU、メモリ、ディスク)の柔軟な拡張(スケールアップ)が可能。

VPS利用におけるデメリットと留意事項

VPSには多くの利点がありますが、以下の点は事前に理解しておく必要があります。

サーバー管理の知識と作業

OSのセットアップ、セキュリティパッチ適用、ソフトウェアアップデートといったサーバー管理作業は、基本的にユーザー自身の責任範囲となります。これにはコマンドライン操作の知識が役立ちます。

費用的側面

一般的に、同程度のディスク容量であっても共有サーバーと比較して月額費用は高くなる傾向があります。

ホスティング選択の判断基準:共有サーバー vs VPS

どちらのホスティング形式が最適かは、Webサイトの要件によって異なります。

  • 優先事項がセキュリティ、パフォーマンス、カスタマイズ自由度の場合
    → VPS
  • 将来的なWebサイト規模拡大が見込まれる場合
    → VPS
  • 最優先事項が低コスト、サーバー管理の手間を避けたい場合
    → 共有サーバー(ただし、セキュリティリスク受容が前提)

現在、セキュリティやパフォーマンスに少しでも懸念がある場合は、VPSへの移行を検討する価値は十分にあります。

WordPressサイトのVPS移行手順:共有サーバーからの具体的なステップ

このセクションでは、WordPressサイトを共有サーバーからVPSへ移行するための具体的な作業手順を、ステップ形式で解説します。

ステップ1:VPS移行の準備
最適なVPSサーバーの選定と比較、契約まで

適切なVPSサーバーを選択することが、移行プロジェクトの成功の鍵となります。

VPS選定における重要確認項目:セキュリティ・料金・性能・サポート

VPSサービスを選定する際は、以下の要素を総合的に評価し、コストパフォーマンスも考慮しながら最適なプランを決定します。セキュリティ強化とWebサイト高速化の実現可能性も重要な判断基準です。

セキュリティ機能
提供されるファイアウォール、不正アクセス対策オプション(IDS/IPS)、WAFの有無と内容。
料金体系
初期費用、月額料金、データ転送量の上限と超過料金、最低契約期間(料金はキャンペーン等で変動するため、必ず公式サイトで最新情報をご確認ください)。
サーバー性能
CPUコア数、メモリ容量、ストレージの種類(NVMe SSD推奨)と容量(WordPressの運用には2GB以上が望ましい)。
サポート品質
サポート窓口(電話、メール等)、対応時間、技術サポートの範囲。
管理ツールの利便性
コントロールパネルの機能と操作性。

WordPress用途に適した人気VPSサービスの比較
料金・機能・使いやすさ、コストパフォーマンスで選ぶ

おすすめポイント月額料金目安サポート推奨ユーザー層
XServer VPS 高速NVMe採用、安定した性能、電話サポート提供、WordPressユーザーからの評価が高い。約580円~(2GB・36ヶ月契約)メール・電話・チャット速度・安定性重視、WordPress利用者、初心者~中級者
ConoHa VPS使いやすい管理画面、高速SSD、WordPress実行環境KUSANAGI利用可能、時間課金。約550円~(2GB・36ヶ月契約)メール・電話・チャット新技術志向、柔軟な料金希望者、WordPress利用者、初心者~中級者
さくらのVPS 長年の運用実績と安心な運用体制、幅広いプラン構成、豊富な技術情報。約1,594円~(2GB・12ヶ月契約)メール・電話・チャット安定性重視、情報アクセス重視者、中~上級者
上記は日本の代表的なVPSサービスですが、内容は常に変動するため、必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。

特にWordPressサイトのパフォーマンスとサポート体制を重視する場合、国内シェアNo.1のエックスサーバーが提供するVPSサーバー『XServer VPS』は、有力な選択肢です。

選択したVPSの契約・申し込みプロセスと初期設定概要

ここでは例としてXServer VPSの契約手順の概要を示します。

1. XServer VPSの申し込み手順
1. 公式サイトへアクセス
まずは、XServer VPSの公式サイトへアクセスします。
2. プラン選択
希望するサーバースペック(CPU、メモリ、ディスク容量など)や予算に基づいてプランを選択します。XServer VPSでは、複数のプランが用意されており、また、長期契約にすればするほど、月額料金が割引になり、1ヶ月あたりの料金が安くなります(料金は変動しますので、公式サイトで最新情報をご確認ください)。
3. 申し込みフォームへ
「お申し込み」などをクリックして申込みフォームへ進みます。
4. XServerアカウントの登録またはログイン
初めて利用する場合は、「すぐにスタート!新規お申込み」ボタンなどからXServerアカウントを新規登録します。メールアドレス、その他個人情報などを入力し、メール認証およびSMS・電話認証を行います。
すでにXServerアカウントをお持ちの場合は、ログインします。
5. VPSの申し込み
サーバー名(後から変更可能)を入力します。
契約期間を選択します(長期契約ほど月額料金が割安になります)。
利用するOSを選択します。一般的なLinuxディストリビューション(Ubuntu、CentOS代替のAlmaLinux、Rocky Linuxなど)や、特定のアプリケーションがプリインストールされたアプリイメージを選択できます。
rootパスワードを設定します。これはサーバーの管理者権限を持つ重要なパスワードですので、安全なものを設定し、必ず控えておきましょう。
SSH Keyを設定する場合は、ここで設定または登録します。SSH Keyはパスワード認証よりも安全な接続方法です。自動生成するか、既存の公開鍵をインポートすることができます。
6. 申込内容を確認し、支払い
クレジットカード決済、あと払い、プリペイド決済にて支払い手続きを進めます。
2. XServer VPSの初期設定手順

申し込みが完了し、VPSが利用可能になったら、初期設定を行います。

1. VPSパネルへログイン
XServerアカウントにログイン後、契約管理ページからVPSパネルにアクセスします。
2. サーバー情報の確認
VPSパネルで、VPSのIPアドレス、ホスト名などの情報を確認します。
3. SSHでの接続準備
申し込み時にSSH Keyを設定した場合、秘密鍵をダウンロードして安全な場所に保管していることを確認します。Windowsの場合はPuTTYなど、MacOSやLinuxの場合はターミナルなど、SSH接続ができるクライアントソフトを用意します。
4. SSHでサーバーに接続
接続したら、OSのアップデート、一般ユーザーの作成、rootログインの禁止、ファイアーウォールの設定、必要なソフトウェアのインストールや設定などを進めていきます。

詳しくは、公式マニュアルなどを確認し、進めていきます。

VPS契約前の最終確認チェックリスト

契約を進める前には、以下の項目を公式サイトなどで最終確認しておきます。

  • 初期費用は発生するか、金額はいくらか。
  • 月額(または年額)料金に含まれるサービス範囲は何か。追加料金が発生するケースはあるか(データ転送量超過、オプション利用料など)。
  • 利用可能な支払い方法は何か(クレジットカード、銀行振込、コンビニ払いなど)。
  • テクニカルサポートの範囲、対応時間、問い合わせ方法(電話、メール、チャットなど)。
  • 最低契約期間の有無、および解約手続きの方法。
  • 無料お試し期間の有無、期間、利用条件。

ステップ2:VPSサーバー環境のセットアップ
OSからWordPress最適化まで

契約したVPS上に、WordPressの実行に必要なサーバー環境を構築します。

Webサーバー、PHP、データベースのインストールと基本設定

選択したOS(AlmaLinux、Rocky Linux、Ubuntuなど)上に、以下のソフトウェア群(LAMP/LEMPスタック)をインストールし、設定します。

  • Webサーバーソフトウェア(Apache / nginx)
  • PHP(WordPress要件を満たすバージョン)
  • データベースサーバー(MySQL / MariaDB)

これらのインストールは、通常、OSのパッケージ管理システム(yum、aptなど)を用いたコマンドライン操作によって行います。

WordPress運用に合わせたサーバーチューニングの基本

必要に応じて、PHP・Webサーバー・データベースサーバーの設定ファイルを調整し、WordPressの動作に最適化します。コマンドライン操作に不慣れな場合は、コントロールパネルやテンプレートの利用を検討します。

ステップ3:WordPress移行の下準備
共有サーバーのWordPressデータ完全バックアップ取得

データ損失リスクに備え、現行の共有サーバーからWordPressサイトの全データをバックアップします。

WordPressファイル群(テーマ、プラグイン、メディア)のバックアップ

共有サーバーが提供しているファイルマネージャー機能やFileZillaなどのFTPクライアントを使用して、WordPressがインストールされているディレクトリ(wp-content、wp-includes、wp-adminフォルダやルートディレクトリのファイル)全体を、ローカルPCにダウンロードします。特にwp-contentフォルダには、テーマ、プラグイン、アップロードした画像などの重要なデータが含まれています。

WordPressデータベース(投稿や設定情報)のエクスポート

共有サーバーのコントロールパネルにあるデータベース管理ツール(通常はphpMyAdmin)にアクセスします。WordPressが使用しているデータベースを選択し、エクスポート機能を利用して、データベース全体の構造とデータをSQLファイル形式(拡張子sql)でダウンロードします。代替として、WordPressのバックアップ用プラグインを利用してデータベースのエクスポートを行うことも可能です。

ステップ4:WordPressの移行
WordPressファイルとデータベースのVPSへの移行作業

バックアップしたデータを新しいVPS環境へ転送します。このステップでは、ファイル転送とデータベース移行が主要な作業です。

FTPクライアントを用いたファイルアップロード

FTPクライアントを使い、新しいVPSに接続します。接続には、VPSのIPアドレス、作成したユーザー名、パスワード(または設定したSSHキー)が必要です。ステップ3でバックアップしたWordPressのファイル一式を、Webサーバーがコンテンツを公開するように設定したディレクトリ(/var/www/htmlなど)にアップロードします。アップロード後、必要に応じてファイルやディレクトリの所有者・パーミッション設定を確認・変更します。

phpMyAdminまたはコマンドライン操作によるデータベース移行(インポート)

VPSにデータベース管理ツール(phpMyAdmin)をインストールするか、コマンドライン操作(mysqlコマンド)を用いて、WordPress用の新しいデータベースと、そのデータベースを操作する権限を持つ新しいデータベースユーザーを作成します。その後、作成したデータベースに、ステップ3でエクスポートしたSQLファイルをインポートします。データベース移行時には、文字コードの不整合などに注意が必要です。

ステップ5:WordPress設定ファイルの変更

VPSへアップロードしたWordPressファイル内のwp-config.phpを編集し、データベース接続情報をVPS環境に合わせて書き換えます。

  • DB_NAME:ステップ4でVPS上に作成したデータベース名に書き換えます。
  • DB_USER:ステップ4で作成したデータベースユーザー名に書き換えます。
  • DB_PASSWORD:上記ユーザーに設定したパスワードに書き換えます。
  • DB_HOST:通常は localhost のままで問題ありませんが、環境によっては異なる場合があります。

ファイル編集後、保存してアップロードし直します。

ステップ6:DNS設定変更とWordPressサイトの最終動作確認

移行プロセスの最終段階として、ドメイン名が新しいVPSサーバーを指し示すようにDNSレコードを更新します。

ドメイン管理サービスでのDNSレコード変更

ドメイン名を管理しているレジストラやDNSサービスの管理画面にて、対象ドメインのDNSレコード(通常はAレコード)を、新しいVPSのIPアドレスに変更します。もしVPSサービスから特定のネームサーバーを使用するよう指示があれば、ネームサーバー設定を変更します。

このDNS設定変更がインターネット全体に反映(浸透)するには、通常、数時間から最大で72時間程度を要します。この時間は、各所のDNSキャッシュの状況によります。

移行後のサイト表示・機能に関する確認項目

DNS設定変更の反映後、以下の項目についてWebサイトの動作を十分にテストします。

  • サイトの各ページ(トップページ、個別記事、固定ページなど)が正しく表示されるか(デザイン崩れ、文字化けがないか)。
  • 画像や動画などのメディアファイルが正しく表示・再生されるか。
  • サイト内のリンク(内部リンク、外部リンク)が正しく機能するか。
  • WordPressの管理画面(/wp-admin/)に正常にログインできるか。
  • 管理画面内で記事の新規投稿、編集、削除が問題なく行えるか。
  • プラグインやテーマの設定変更が反映されるか。
  • お問い合わせフォーム、コメント機能、ECサイトのカート機能などが正常に動作するか。

WordPress移行作業を支援するツールと外部サービス

手動での移行作業が困難な場合、以下の利用も有効です。

WordPress移行プラグイン
All-in-One WP Migration and Backup、Duplicator、WPvivid Backup & MigrationなどのWordPressプラグインは、データベース移行を含むプロセスをかなり簡略化できます。
VPS提供の移行支援ツール
一部のVPSプロバイダーは、独自の移行ツールを提供しています。
専門家による移行代行サービス
確実性を求める場合は、専門業者への依頼も選択肢となります。

VPS移行後に実施すべきセキュリティ対策と運用管理(サーバー管理の基礎)

VPSへの移行完了後も、継続的なサーバー管理とセキュリティ対策が不可欠です。これらはVPS利用者の責任となります。VPSでは、日々のサーバー管理がWebサイトを守る上で非常に重要になります。

サーバーOSレベルでの基本セキュリティ設定:ファイアウォール、SSH、不正アクセス対策

最低限実施すべきサーバーのセキュリティ設定は以下の通りです。

ファイアウォールの設定
ufw(Ubuntu)や firewalld(CentOS系)などのファイアウォールソフトウェアを使用し、HTTP、HTTPS、SSHなど、公開に必要なポート以外へのアクセスをデフォルトで拒否するように設定します。
SSHアクセス制御
パスワードによるSSHログインを無効化し、より安全なSSH公開鍵認証方式のみを許可するように設定します。
rootアカウントでの直接SSHログインを禁止し、一般ユーザーでログイン後にsudoコマンドなどで管理者権限を使用するようにします。
SSH接続に使用するポート番号を標準の22番から他の番号に変更するのも有効です。
不要サービスの無効化
サーバー上で動作しているサービスを確認し、使用していない不要なサービスは停止・無効化して攻撃対象領域を減らします。
不正アクセス対策
fail2banなどの侵入検知・防御ツールを導入し、SSHログイン試行の失敗を繰り返すIPアドレスなどを自動的に一時ブロックする不正アクセス対策を施します。

WordPressアプリケーションレベルでのセキュリティ強化策(WAF導入を含む)

サーバー基盤の対策に加え、WordPress自体も保護します。

セキュリティプラグインの活用
Wordfence Security、SiteGuard WP Plugin、All-In-One Securityなどのセキュリティプラグインを導入し、ログイン試行回数制限、ログインページのURL変更、マルウェアスキャン、ファイル変更検知などの機能を有効化します。
WAF(Web Application Firewall)の導入
SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング等のWebアプリケーション攻撃からサイトを保護するため、WAFの導入を強く推奨します。VPS提供のオプションやCloudflare等の外部WAFサービスが利用可能です。
基本的な運用慣行
強力でユニークなパスワードの使用、管理者アカウント名(例えば「admin」)の回避、WordPressコア、テーマ、プラグインの迅速な更新、不要なテーマやプラグインの削除、ユーザーアカウント権限の適切な割り当て(最小権限を原則に)を徹底します。

VPS環境におけるWordPress自動バックアップ体制の構築

サーバー管理の一環として、定期的な自動バックアップシステムを構築します。データの損失は致命的となりうるため、これは必須の作業です。

WordPressプラグイン
UpdraftPlusのようなバックアッププラグインを使用し、スケジュール設定に基づき、ファイルとデータベースのバックアップを自動で実行し、DropboxやGoogle Driveなどの外部ストレージに保存するように設定します。
サーバー側スクリプト
Linuxのcronジョブスケジューラとシェルスクリプトを組み合わせ、ファイルとデータベースのバックアップを定期的に実行し、生成されたバックアップファイルをVPS内の別ディレクトリや外部サーバーやクラウドストレージなどに転送します。
VPSプロバイダーのバックアップ機能
多くのVPSサービスでは、サーバー全体のスナップショット(イメージバックアップ)やファイル単位のバックアップサービスを有償または一部無償で提供しています。これらの利用も検討します。

最低でも1日に1回はバックアップを取得し、過去7日分など複数のバックアップ世代を保持することが推奨されます。

OS・ミドルウェア・WordPressコンポーネントの継続的なアップデート管理

OS、ミドルウェア(Webサーバー、PHP、データベースサーバー)、WordPress本体、テーマ、プラグインの全てにおいて、脆弱性修正のためのアップデートを定期的に確認し、適用することが極めて重要です。これも重要なサーバー管理作業です。

OS・ミドルウェア
サーバーにログインし、OSとインストール済みソフトウェアパッケージを定期的に最新の状態に更新します。
WordPress本体・テーマ・プラグイン
WordPressの管理画面に表示される更新通知を定期的に確認します。重要なアップデート(特にセキュリティ修正を含むもの)は、可能であればステージング環境等で事前にテストした後、速やかに本番環境へ適用します。

結論:共有サーバーからVPSへの移行によるWordPressセキュリティ向上

共有サーバーは手軽ですが、本記事で解説したようなセキュリティ上の懸念が存在します。

共有サーバーのリスクとVPS移行の便益・留意点の再確認

VPSへの移行は、共有サーバーのリスクを回避し、以下を実現する効果的な戦略です。

  • セキュリティ体制の強化
  • Webサイトパフォーマンスの向上(Webサイト高速化)
  • サーバー設定・運用の自由度獲得(root権限の活用)

一方で、サーバー管理の責任とコストが増えますが、適切なサービスとプラン選択によりコストパフォーマンスを高めることも可能です。

推奨VPSサービスを活用した安全なWordPressサイト運営への移行

セキュリティインシデントが発生する前に、先を見越してVPS移行の検討をおすすめします。

WordPressサイトの強化におすすめ:エックスサーバーVPS

国内シェアNo.1のエックスサーバーが提供するVPSサーバー『XServer VPS』

VPS移行・サーバー設定に関する初心者向けサポート情報

VPSのサーバー管理やコマンドライン操作に不安がある場合は、VPSプロバイダー提供のサポートサービス(プランによる)や、専門知識を持つ外部パートナー(Web系制作・開発会社、フリーランスエンジニアなど)への相談も、有効な手段です。

本ガイドが、皆様のWordPressサイトの安全性とパフォーマンス向上に貢献できますと幸いです。

芦屋 ときお

芦屋 ときお

ソフトウェアエンジニア(フルスタック、主にWeb系)。HTML, CSS, JavaScript, TypeScript, PHP, Python, Go, Vue.js, Express, Node.js, Nuxt, Next.js, Laravelなど。C#, ActionScriptも。デザイン、デジタルマーケティング。